あおみの読書日記📚

いろんな小説に触れて、繋げたい

怪物はささやく/パトリックネス

※本ブログでは、小説好きなブログ管理人が、自身のお気に入り小説を少しでも多くの方に読んでもらいたいという思いから、自由気ままに感想を書いております。

中にはネタバレに近いものもあるかも知れませんが、こちらの感想を読んで少しでも小説に興味を持っていただけたら嬉しいです(^ ^)

 

 

評価☆☆☆☆

 

死とは即ち無であり、発展もなければ衰退もない。死んだ者の人生の舞台には既に幕が降ろされ、どれだけ幕の内側で藻搔いたとしても、その熱意は誰にも伝わらない。
しかし、死んだ者が生き残れるステージがただ一つある。それは他人の記憶の中だ。
某有名海賊漫画にこんな言葉がある。
『人はいつ死ぬと思う?(中略)人に忘れられた時さ!』
私はこの言葉が好きだ。死という闇の中に、誰にも知られずひっそりと光る星を見つけようとする必死さと、人間臭さを感じるからだ。
死が死であり続けるこの世には悲しみが溢れている。あまりにも救いのない悲しみが。だからこそ、人々は喜びを必死に求めるのかもしれない。奈落の底へ突き進む列車に乗っているという事実から目を背けて、列車から見える景色に心を震わせたり、並行して走る列車との出会いに胸を膨らませるのだ。そうしないと、死の恐怖に心をやられてしまうから。
こう表現すれば、人間は弱いのかもしれない。いや、人間は弱い。用意された結末に正面から向き合えない程に。
そんな弱い人間を少しでも強くしてくれるのが日々経験する喜びや楽しみ、さらには悲しみを通して出会う他人なのだ。そして、その喜びや悲しみには必然的に物語がある。真実の物語は他者との繋がりを強固なものにする。自分が大切にしたいと思う人と様々な物語を共に紡ぎ、それらを慈しむことこそが生きることであり、それこそが人間が生きる意味なのかもしれない。
ただ漫然と日々を過ごすのではなく、自分が大切にしたいと思う人たちと私でしか語ることのできない物語を多数紡げるようにきちんと人間として生きたいと強く思った。

 

 

怪物はささやく (創元推理文庫 F ネ 2-1)

怪物はささやく (創元推理文庫 F ネ 2-1)